新規開業を考えたときの不安点に自己資金が挙げられます。しかし、人によっては自己資金が用意できない場合もあるかと思います。
自己資金がないと制度融資は受けられないのでしょうか。
今回は、新規開業の際の自己資金について、以下の内容をご紹介していきます。
- 自己資金がなくても新規開業はできる
- 自己資金と認められないもの
- 助成金・補助金もうまく利用しよう
結論から言うと、自己資金がなくても新規開業は出来ます。具体的な方法についてお伝えしますので、ぜひご覧ください。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
小規模事業者・個人事業主が融資を受けるための条件
中小企業が融資を受けるための条件
自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き融資)
銀行からの融資(信用保証協会の保証付き融資)
横浜信用銀行の場合
さわやか信用金庫の場合
自己資金と認められないものとは?
タンス貯金
返済義務のあるお金
見せ金と疑われるお金
助成金・補助金もうまく活用しよう
北海道小樽市の創業支援補助金
広島県三次市の新規開業支援事業補助金
兵庫県のミドル起業家支援事業
自己資金がなくても開業は可能だった
自己資金がなくても新規開業はできる!
新規開業の際に、融資を受けようと考える方は多くいるでしょう。
ただし、融資を受ける際には審査があります。
事業計画書をチェックされるだけでなく、どのくらいの自己資金が用意されているか、といった部分も審査の対象です。
人によっては、なかなか自己資金を貯められなかったと言う場合もあるかと思います。しかし、自己資金が用意できなくても、融資を受けられる方法があります。受けられる具体的な制度について、詳しく見ていきましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
新しく事業を始める際に利用したいのが日本政策金融公庫の融資制度です。
日本政策金融公庫にはさまざまな融資制度がありますが、その中で着目したいのが「新創業融資制度」です。
この制度は、無担保・無保証でも最大3,000万円まで融資してくれるのが特徴で、新たな事業を始める方を対象としています。
実際に融資を受けるためには「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」といった条件がありますが、一部例外の場合、自己資金なしでも融資が受けられます。
その例外とは、以下の2点です。
- 今働いている企業と同じ業種の事業を始める場合
- 認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める場合
このどちらかに当てはまる場合は、自己資金がなくても融資を受けられる可能性があります。
日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金
中小企業経営力強化資金は、認定支援機関の指導及び助言を受けることで、初めて利用できる日本政策金融公庫の融資制度です。
中小企業と小規模事業者・個人事業主では融資限度額が異なるため、注意が必要です。
事業者単独では利用できないのが特徴で、さまざまなメリットがあります。
中小企業経営力強化資金のメリットは以下のとおりです
- 融資限度額が高くなる
- 特別利率が適用できる
中小企業経営力強化資金の融資限度額は7,200万円と高額なため、多額の開業費用がかかる場合にはぜひ利用したい制度といえます。
また、一定の条件を満たした場合の基準利率は年利1.26~1.75%、特別利率は0.86~1.35(令和3年2月現在)となっていることから、大きなメリットといえるでしょう。
対して、年1回の報告義務がある点がデメリットです。事業計画の進捗状況を報告し忘れてしまうと繰上償還になる可能性もあるため、注意しましょう。
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度は、いわゆる資本性ローンと呼ばれるものです。中小企業・個人事業主でそれぞれ限度額が異なるため、それぞれの融資が受けられる条件を確認しましょう。
小規模事業者・個人事業主が融資を受けるための条件
1.適用できる融資制度・新規開業資金
- 女性、若者/シニア起業家支援資金
- 再挑戦支援資金
- 新事業活動促進資金
2.そのほかの条件として、次のいずれの要件も満たす方
- 地域経済の活性化にかかる事業を行うこと
- 税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること
上記の2つの条件を満たす法人・個人企業が該当し、融資限度額は4,000万円です。
中小企業が融資を受けるための条件
直接貸付において、新企業育成貸付、企業活力強化貸付または企業再生貸付を利用される企業の中から
- 地域経済の活性化のために、一定の雇用効果(新たな雇用または雇用の維持)が認められる事業
- 地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業
上記のような事業に取り組む企業が該当し、融資限度額は1社あたり3億円です。
自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き融資)
都道府県や市区町村といった自治体でも制度融資を行っています。
自治体が金融機関と連携して融資を行うため、信用保証協会の保証がつきます。
融資の概要は自治体で異なるため、事前の調査が大切です。また、自治体によっては制度融資がない場合もあるため確認しておくとよいでしょう。
銀行からの融資(信用保証協会の保証付き融資)
銀行などの金融機関でも創業に関する融資を行なっています。
金融機関ごとに内容が異なるため、例を挙げて見ていきましょう。
【金融機関比較表】
融資金額 |
融資期間 |
使い道 |
|
横浜信用金庫 |
500万円以内 |
7年以内 |
運転資金 設備資金 |
さわやか信用金庫 |
2,500万円以内 |
運転資金7年以内 設備資金10年以内 |
運転資金 設備資金 |
きらぼし銀行 |
500万円以内 |
5年以内 |
運転資金 設備資金 |
自己資金と認められないものとは?
融資を受けるにあたって必要となる自己資金ですが、場合によっては自己資金と認められない場合もあります。
せっかく自己資金を用意できたとしても認められなければ、今後の事業計画が変わってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
自己資金と認められない3つの例について、詳しく見ていきましょう。
タンス貯金
まず注意したいのが、タンス貯金です。
タンス貯金とは、銀行の口座に現金を入れずに手元に保有しておくことですが、このように保有している現金は自己資金とは認められません。
さらには、開業前に一気に口座へ入金しても「見せ金」と疑われてしまうため、自己資金として認められない可能性があります。
手元にタンス貯金がある場合は、開業のスケジュールを考慮しながら計画的に少しずつ入金するように意識しましょう。
返済義務のあるお金
返済しなければならないお金は自己資金とはなりません。
開業資金として友人から借りたお金や、カードローンの借入金など返す義務があるお金には注意が必要です。
ただし、人からもらったお金は、返済義務がなければ自己資金として認められる可能性があります。
自己資金について心配な方は、融資元へ問い合わせるとよいでしょう。
見せ金と疑われるお金
自己資金に関する失敗としてついやりがちなのが「一気に口座へ入金する」といったミスです。
一度に多額のお金が口座に振り込まれていると、見せ金として疑われる可能性があります。
タンス貯金や親からの贈与、資産を売却したお金などは、口座へ一度に入金せず、少しずつお金の流れが把握できるようにしましょう。
助成金・補助金もうまく活用しよう
自己資金が用意できない場合には、制度融資のほかに、自治体が行なっている補助金や助成金もうまく活用するのがおすすめです。
新規開業に関する助成金や補助金の取り組みをおこなっている自治体の例を挙げて詳しく解説していきます。
北海道小樽市の創業支援補助金
北海道小樽市の「創業支援補助金」は、新規事業で事務所や店舗をかまえる方を対象に、家賃や内外装工事の費用の一部を補助してくれる事業です。
補助金の上限は事業によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
具体的には以下3つのパターンがあります。
- 事務所等家賃補助:限度額は月額5万円(支払いは6ヶ月分まで)
- 内外装工事費補助:限度額は基本50万円(市の中心4商店街は150万円)
- 商店街等店舗家賃補助:限度額は月額5万円(支払いは1年分まで)
ここで注意したいのは、親族からの事業引き継ぎの場合です。
3親等以内の親族から事業を継続して創業する場合、補助金の対象外となりますので、注意しましょう。
広島県三次市の新規開業支援事業補助金
広島県三次市で行われている事業が「新規開業支援事業補助金」です。三次市内で開業する方を対象に、HPの作成やチラシの作成など、広告に関する費用を一部補助してくれます。
上限は20万円で、市内に本店があることが条件です。そのため、本店が市外にある場合は対象外となります。
また、すでに国や県から補助金を受け取っている場合も対象外となるため、注意しましょう。
兵庫県のミドル起業家支援事業
兵庫県で取り組んでいるのが「ミドル事業家支援事業」です。
兵庫県内での起業を目指すミドル層を対象に、開業の際に必要な費用の一部を補助してくれます。
上限は100万円となっており、空き家を店舗として使うことで改修費が別途100万円追加されるのが特徴です。
近年増えている空き家問題も解決しながら、若い世代の創業を促す画期的な事業といえます。
また、同時申請が可能な貸付として「ひょうごチャレンジ起業支援貸付」もありますので、条件に当てはまる場合は、ぜひ検討してみると良いでしょう。
自己資金がなくても開業は可能
今回は、新規開業に関する自己資金について解説しました。
融資を受けるには自己資金が欠かせません。しかし、日本政策金融公庫の制度融資や自治体の補助金など、一定の条件を満たしていれば、自己資金なしでも融資を受けることが可能です。
新規開業に関して、お困りのことがありましたら、ぜひ「株式会社みらいホーム」にご相談ください。金融機関勤務経験と行政書士の資格を生かした融資紹介、事業計画作成、法人設立、許認可申請のサポートまで総合的なアドバイスが可能です。もちろん店舗事務所の紹介もできますので、ぜひ一度お問合わせください。