オフィスなどに利用する事業用賃貸物件ですが、契約にはどのくらいの費用がかかるかご存じでしょうか。事業用賃貸物件を借りるには、居住用賃貸と同様、さまざまな費用がかかります。
この記事では事業用賃貸について、居住用賃貸との違いや初期費用内訳、よくある質問について解説します。あらかじめ費用について確認しておき、契約時に慌てないようにしましょう。
事業用賃貸と居住用賃貸の違い
使用目的の違い
初期費用の違い
事業用賃貸の初期費用内訳
保証金
礼金
仲介手数料
共益費・管理費
前家賃
保険料
事業用賃貸の費用に関するよくある質問
Q.火災保険は自分で選べる?
Q.契約前に支払いが発生する可能性はある?
Q.賃料の交渉はできる?
事業用賃貸の費用を把握しスムーズに契約を進めよう
事業用賃貸と居住用賃貸の違い
事業用賃貸物件と居住用賃貸物件との大きな違いは、「使用目的」「初期費用」の2つです。それでは、この2つの違いについて、詳しく見ていきましょう。
使用目的の違い
事業用賃貸と居住用賃貸では、使用目的が異なります。事業用賃貸物件は居住するための物件とは違い、貸店舗や貸事務所、貸倉庫、貸地などが主な用途です。
基本的に貸主が「事業用賃貸」としているものであれば事業用のみ、「居住用」としているものであれば居住用のみにしか利用できません。
物件を転用するなど、交わした契約への違反があれば、契約解除や違約金の支払いが必要になる可能性があるため、注意しましょう。
初期費用の違い
事業用賃貸物件と居住用賃貸物件では、初期費用も異なります。事業用賃貸物件の方が初期費用が高く設定されており、居住用賃貸の数倍にもなるのです。
これは、事業用賃貸物件の方が賃料が高く設定されているためです。初期費用は賃料を基準に計算されるので、賃料が高ければ高いほど初期費用も高くなります。
また事業用賃貸は保証金も高いのが一般的です。事業が低迷すると賃料の支払いが滞るリスクがあるため、居住用よりも高めに設定されています。
事業用賃貸の初期費用内訳
事業用賃貸の初期費用は、大きく分けて6つあります。
- 保証金
- 礼金
- 仲介手数料
- 共益費・管理費
- 前家賃
- 保険料
それぞれ金額が大きく、居住用賃貸よりも高額な場合が多いため、あらかじめおおよその金額を把握しておくと資金計画が立てやすくなります。それでは、事業用賃貸の初期費用の内訳について詳しく見ていきましょう。
保証金
保証金とは、敷金とも呼ばれる費用です。借主が部屋を汚した場合や損傷させてしまった場合の修繕費用、賃料の支払いが滞ったときのための担保として、物件オーナーに預けます。
部屋の修繕や賃料の滞納がなければ、退去時に全額返金される可能性もあります。居住用賃貸よりも高額で、賃料の3〜10ヶ月分が一般的です。
保証金は預けているお金のため、非課税です。
礼金
礼金は、物件のオーナーにお礼として支払うお金です。元々は高度経済成長期の集団就職で、子どもを送り出した両親が大家さんに渡したという説や、関東大震災で家を失った人々が、後に家を貸してくれた大家さんにお礼としてお金を渡したのが始まりという説もあります。礼金はあくまで「お礼」という体なので、法律で支払いが決まっているものではありません。
礼金の有無はオーナーによって異なり、礼金自体がない事業用物件も多くあります。礼金は、保証金と違って退去時に返還はされません。金額は賃料の1〜2ヶ月分が一般的です。
仲介手数料
仲介手数料とは、物件のオーナーと借主を仲介してくれた不動産会社に支払うお金です。不動産会社は仲介する立場として、物件情報の提供や契約手続き、重要事項の説明を行います。
不動産会社が仲介手数料として受け取れる金額の上限は「賃料1ヶ月分+消費税」です。仲介手数料の過払いトラブルが発生することもあるので、この上限額についてはしっかり把握しておきましょう。
共益費・管理費
共益費・管理費は同じ建物を共有する人たちが気持ちよく過ごすために、設備や環境を整えるための費用です。建物の外壁塗装や共有部分の清掃、エレベーターのメンテナンスなどに使われます。
共有部分を清掃する管理人がいる場合は、その方の人件費に充てられるのが一般的です。契約する物件によって「共益費」「管理費」と呼称は変わりますが、内容は変わりません。
前家賃
前家賃は、あらかじめ物件のオーナーに支払う賃料です。
契約を交わした日から翌月分までを日割りで算出し、翌月分の家賃と合わせて前家賃として支こ払います。基本的に家賃は先払いのため、契約時の2ヶ月分が初期費用となります。翌月分の家賃を先払いしているだけで、余分にお金を支払っているわけではありません。
保険料
保険料は、火災保険や家財保険といった、保険に加入する際に必要な費用です。事業用賃貸を契約する際には、火災保険の加入が必須となっています。
事業用物件であっても火災のリスクはつきものです。万が一火災になってしまった場合、物件のオーナーへの弁償なども考えなくてはなりません。自分の身を守るといった意味でも、火災保険には加入するようにしましょう。
事業用賃貸の費用に関するよくある質問
ここでは、事業用賃貸の費用についてのよくある質問をご紹介します。事業用賃貸の契約にかかる費用は金額が大きいため、小さな不安もきちんと解消しておくことが重要です。それでは、事業用賃貸の費用についてよくある質問3つにお答えします。
Q.火災保険は自分で選べる?
火災保険の加入は必須ですが、どこの保険会社に加入するかは自分で選べます。まれに、不動産会社や物件のオーナーが保険会社を指定する場合がありますが、相談次第では変更も可能です。
また、「保険会社はどれでもいいが、借家人賠償責任保険は付帯してほしい」といったケースもあります。借家人賠償責任とは、万が一火災になった場合のオーナーに対する損害賠償です。
借家人賠償責任保険へ加入していれば、火災が発生した際に物件のオーナーへ決まった金額が支払われます。
Q.契約前に支払いが発生する可能性はある?
契約前に支払いが発生する可能性はありません。契約金や初期費用は契約締結後に支払うもののため、契約締結前に支払いは発生しないのが一般的です。
まれに、事業用賃貸の契約で「契約前に支払いを求められた」といったトラブルがあります。このように契約前に支払いが発生した場合は、何らかの手違いが起きている可能性があるため、すぐに支払わずに、一度不動産会社へ確認してみましょう。
Q.賃料の交渉はできる?
賃料の交渉はできますが、物件のオーナーからの信頼がなくなるような方法は避けましょう。「強気で交渉しない」「下がると決めつけない」といった意識が重要です。
家賃を下げるのは物件のオーナーにとって大きなリスクになります。家賃交渉はオーナーにとってはよい話ではないので、強気で交渉するのは避けましょう。まずは家賃が下げられないか、相談ベースで交渉を進めるのが大切です。
また、家賃交渉がうまくいかなかった場合、おとなしく引き下がるのがポイントです。しつこく交渉を続けると、信頼関係を損ねてしまいかねません。
事業用賃貸の費用を把握しスムーズに契約を進めよう
今回は、事業用賃貸の費用についてご紹介しました。事業用賃貸契約の場合、居住用賃貸契約よりも、初期費用や賃料などの費用がかさみます。しかしながら、礼金の有無や火災保険の選び方などを工夫すれば、初期費用は抑えられるでしょう。
希望している事業用賃貸物件の家賃を用いて計算をしてみると、おおよそかかる費用が分かります。契約前には一度費用の概算を算出し、契約に進んでも問題ないかの検討材料にしましょう。